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編みかけのことば——2

「とんぼの眼鏡」


蛙の眼鏡を作ったら、

どこから噂を聞いたのか、ほうぼうから注文が来た。

あらかじめ、お客ひとりひとりに、

作る工程が多いからすぐにはできないし、

素材が羊の毛で実用には不向きだし、

何より眼鏡の本職ではないから、

と、くだくだと説明をする。

新しい作品は不安だ。

自分でも実際に、

着てみて、巻いてみて、かけてみて、と、

しばらくかたわらにおき、

不具合を確かめた上でないと販売はしにくい。

ほどなくして、とんぼがやって来た。

仕事場の庭に面した窓から、

ちょくちょくのぞいてみていたらしい。

出来はおまかせします、あなたの思うままに、

こう話すので、

よし、そういうことなら、

と、青い空を飛んでいるからやはり空色だろうか、

澄んだ青か、みず草に近い青か、

あれこれ想像をめぐらせた。

数日後、試作を見せると、

ピンクの柄が気に入らないと言われ、

作り直しとなった。






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