蛙の眼鏡を作ったら、 どこから噂を聞いたのか、ほうぼうから注文が来た。 あらかじめ、お客ひとりひとりに、 作る工程が多いからすぐにはできないし、 素材が羊の毛で実用には不向きだし、 何より眼鏡の本職ではないから、 と、くだくだと説明をする。 新しい作品は不安だ。 自分でも実際に、 着てみて、巻いてみて、かけてみて、と、 しばらくかたわらにおき、 不具合を確かめた上でないと販売はしにくい。 ほどなくして、とんぼがやって来た。 仕事場の庭に面した窓から、 ちょくちょくのぞいてみていたらしい。 出来はおまかせします、あなたの思うままに、 こう話すので、 よし、そういうことなら、 と、青い空を飛んでいるからやはり空色だろうか、 澄んだ青か、みず草に近い青か、 あれこれ想像をめぐらせた。 数日後、試作を見せると、 ピンクの柄が気に入らないと言われ、 作り直しとなった。